Evidenceの学校

根拠(エビデンス)に基づく教育(Evidence-based Education)の発展を目指して!

どうして私は環境を変えたのか。もっと余暇を過ごす時間が必要です。

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みなさんの労働時間は週何時間ですか?

 

私は研究を行っていますので、去年まで1日12~13時間は研究室に籠っていました。

 

しかし、ある研究を知り私は研究する環境を変えました。

 

その研究で分かったこととは…

 

労働時間が週55時間以上の人は労働時間が週35~40時間の人と比べて脳卒中のリスクが1.3倍であるということです。

 

今回は2015年に発表されたヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの男女603,838人を対象としたメタ分析(論文を統合して再解析した最もエビデンスレベルが高いとされるもの)を行った研究になります。
この論文も医学のトップジャーナルに掲載されていますね。

 

この研究の背景として、長時間労働は循環器疾患に関連することがメタ分析で言われていたのですが、

1.出版バイアス(簡単に言いますと都合の良い結果ばかりを集めたものの可能性があるということ。結果が出ないものなどは論文としないこともありますので)があるのでは?

2.循環器疾患を起こす前に基礎となる疾患がるために労働時間を短くしていた可能性があるのでは?

3.長時間労働の人々は経済的地位が高いのが一般的であり、経済的地位も影響しているのでは?

4.脳卒中についての研究は少なく、長時間労働についても脳卒中と関連するのでは?

 

という上記の疑問を解決しようと研究者たちは調査したみたいですね。

 

この研究では労働時間と冠動脈疾患について調査した3705件、または労働時間と脳卒中との関連について調査した1958件のうち基準に適した合計42件の論文を採用しています。

 

その結果、性別、年齢、社会的地位に関わらず、労働時間が週35~40時間の人(つまり毎日定時に出社し退社する人)と比較して労働時間が週55時間以上の人は冠動脈疾患のリスクが1.13倍となっていました。さらに、脳卒中のリスクも1.33倍となっていました。なんとも恐ろしい…

 

この要因としては、長時間労働によるストレス反応があげられています。また、長時間労働による運動不足(座りっぱなしなど)や大量の飲酒が考えられると研究者たちは述べています。

 

この研究の限界としては、労働時間の調査が自記式であったこと(海外の研究のため、おそらく良い印象を与えるために短めに記載した可能性が考えられます。日本では努力が美化されるので長めに書かれそうですが)、追跡期間中に脱落が多かったこと(バイアスの原因となります)、疾患に関係がある塩分摂取量や血液のデータについては調整できなかったこと、医師が診断したものや自記式によるものなど疾患の判定があいまいなものが含まれたことなど多くあります。

 

しかしながら、長時間労働が健康を害する根拠とはなると思います。

 

授業は立って行っていたり、子供と活動を共にするため、研究を行う私たちより座りがちな生活でないと思います。

 

しかし、教員の皆さんは平均して学校に在籍する時間が1日11時間以上と言われていますので月~金までだとすると(土日も出勤していることは存じておりますが)週55時間を超えてしまいます。

 

この研究結果からみても、自分の自由な時間がないだけでなく、疾患のリスクも上げてしまうというのは由々しき事態です。

 

ですが、国が…文科省が…教育委員会が…と言っていても現状は何一つ変わりません。また、どんなにつらいのかと述べていてもやはりすぐには動いてくれるかの可能性は低いと思います(現に自分が見ていないところで子供たちがあの子が悪いこの子が悪いと言っていても判断できませんよね?)。

 

それならば、客観的事実を集め、これだけのリスクにさらされているのだと提示することが今の現状を変える方法の一つなのではないでしょうか?

 

しかし、今は子供たちがいないから週55時間の労働はないとしても、学校が再開した時にこの状況をどうすればよいのか…

1つは、まずは健康的な生活、つまり運動、食事、睡眠といった規則正しい生活を送ること。(先生ができないことをいっても子供たちに説得力はありませんからね。)

 

いやそんなことはわかっているけどそれをする時間が…

 

では2つ目は、時間を効率的に使い作業を早く終えることです

 

効率的な時間の使い方について今後お話しできればと思っています。

少しでもご参考になれば。では…

 

reference
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)60295-1/fulltext