Evidenceの学校

根拠(エビデンス)に基づく教育(Evidence-based Education)の発展を目指して!

正しく評価する方法。わが校の算数の平均点が全国値より低い…あなたはこれをどう評価しますか?

昨年のある冬、ある学年主任がこう告げた。

 

「私たちの学年は全国平均よりも算数の平均値が3点低いようでした…対策を考えなければなりませんね。」

 

あなたはこれを聞いてどう思いますか?(じっくりと考えてみてください)

 

できれば最初の意見をコメント欄書いていただけると議論もできますので良いかと。是非ご活用ください。

 

頭のキレる方はそもそも算数の得点は正規分布しているの?そうでなかったら平均点で議論していいの?などさまざま考えられると思います。

 

少し難しいことは置いておいて…

 

教育の評価方法としては「テスト」が多く使われていると思います。

 

標準化されたテスト(全国学力調査、学校で行われる単元テストなど)は、その内容、採点方法についてはすべての受験者で同じです。

 

そのため、標準化されたテストを行うことで、生徒の学習を客観的に評価する方法として知られています。

 

しかし、ある研究者たちはこう思いました。

午後になると疲れて集中力なくなるよな…ん…?つまり、テストを受けた時間によって成績に影響するんじゃないか?

実際に、注意を払う必要がある作業を続けていくとモチベーションが低下することや、注意力が散漫になること、情報処理が低下することがすでに分かっています(みなさんも体感したことがあると思います)。この例には裁判官の囚人の要求の拒否や医療ミスなどさまざまな例があります。(ご興味ある方はお声いただければ例はいくらでも…)
一方、休憩により注意力や生産性の向上が報告されていることから、Sielvertsen先生らは認知疲労そして休憩が、テストの成績に影響するか調査してくれました。

 

まず今回の研究ではデンマークの570,376人の生徒を対象に2009年、2010年と2012年、2013年度に行われたテストデータ約200万件を調査したみたいです。

 

さらにデンマークについて少しだけ。デンマークでは日本でいう全国学力テストがオンラインで行われます。しかし、奇しくも(このおかげでかもしれませんが)コンピュータの数に限りがあることと時間割の影響で同じテストでも子供たちによって受ける時間が違うようです。そのため、テスト時間が異なる群間で対象者の特性に違いは見られなかったそうです(おそらく、偏った集団同士ではないだろう:つまりバイアスはないだろうということです)。

 

余談ですが、デンマークでは日本でいうマイナンバーにより行政デジタル化などが進んでいます。そのため全数調査が可能なので近年興味深い研究を発表してます。(どこかの国は国民の番号の管理すら疑問に思われていますが。しかも、IT担当大臣にハンコの文化を守るとかいう謎の人物がなっておりますが…)

 

また、読解テストは2,4,6,8年生で(デンマークでは6歳から入学して10年生までらしいです)、数学は3,6年生、地理、物理、化学、生物などの科目を7,8年生で行うようです。

 

ちなみに本研究において教師や親にインセンティブなど特別なことはないです(バイアスになるので)。

 

また、学校により休み時間が違うらしいのでおそらくランダムに選んだ10%の学校に電話で確認したところ、多くの学校で休み時間が一致していることを確認し、テスト日にはその通常の休憩スケジュールであるかを確認しています。

 

果たしてテストを受ける時間は結果に影響したのか

 

この研究では、テストが行われた時間が1時間遅くなるについれて点数が少しずつ下がっていきました

 

この影響は、親が低所得であるか低学歴であること、学校を10日日間欠席した場合と同程度の影響になることが分かりました。時間は超重要ですね…

 

一方、20~30分間の休憩(食事や会話、遊び)をした後には成績が低下せずむしろ成績が上がっていました

 

この影響は親が高収入または高学歴であることや学校を19日間多く来た時と同程度の影響がみられました。

 

さらに注目なことが、時間の影響によるパフォーマンスの低下、休憩によるパフォーマンスの向上は成績が良くない生徒たちほど影響が強い可能性が示されたことです。

 

しかし、研究者たちも述べている通り、この研究から学校の始まりをはやくしよう!テストはさいしょにやってしまえ!というわけではありません。

 

学校の始まりを早くすることは教員の方々や保護者にまで負担をかけますし、後日お話しする通り、個人に適したリズムがあります。また、子供たちの睡眠時間を削ってしまってはいけません。

 

テストを早い時間に行うべきか否かについては議論があると思います。しかし、もし自身の学校の成績を全国値や県の平均値と比べる際には時間による違いの影響があるのではない?ほかに成績に影響を与えていた可能性はないか?と考えることが必要だと思います。

 

そうすることで、偶然の差なのか本当に意味のある差なのかをしっかりと理解することが今後の子供たちの教育により効果的につなげれれると思います。

 

つまり、一番最初の質問には

1.平均点が低い要因にはテストを受けた時間の影響があった可能性が一つあります。

2.勤務している学校の学区ではどのような人たちのお子さんなのか(例えば、高級住宅街に住んでいる生徒たち:つまり親の収入が高い、高学歴なことが考えられる、自然災害などの影響で去年授業がなかなかできない時期があった)、など成績に影響を与えた他の要因の可能性もあります。そのため、私が伝えたいことは全国値と比較して平均点が低いからと言ってこの学校は劣っているとすぐに結論付けてはいけないということです。(3点低いというのは根拠はありません。ただ全体として3点低いとなると劣ると考えられるとは思いますが…)

 

実際には他にも、ここはまだ解説してませんが…1回のテストの結果だけでは分からない。(たまたま低かったという可能が否定できないので)などなどたくさんの要因が考えられます。

 

それにしましてもこの研究はなかなか興味深い結果ですね。やはり休み時間は大切。そして成績がよくないほど休み時間による良い影響が強いとは…


コロナの影響で学校が再開した際には時間の余裕がないことが考えられますが、短期的な結果ではなく長期的に考える必要があると思います。

 

ではより効果的な休憩とはなにか、実際にどんな時になにをやればよいかなどこれから発信していきたいと思います。

 

最後に完璧なタイミングについてより詳しく学びたい方にオススメの参考書とReferenceを…では…

 

 参考文献

なぜ英文原著…本屋より安いんだ…(私は原著も読みましたが英語で読める方はぜひ)

 

Reference

Cognitive Fatigue Influences Students' Performance on Standardized Tests - PubMed

 

 

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