Evidenceの学校

根拠(エビデンス)に基づく教育(Evidence-based Education)の発展を目指して!

本当に1回の授業でいい授業と判断できますか?

授業を1回見ただけで良い授業と判断できますか?

 

子供を怒った後は、成績が上がりますか?

 

クラスの平均点が全国値よりも高ければ本当にそのクラスの成績は良いですか?

 

これらの質問にあなたはどう答えるだろう。

 

この質問の答えは「正しくもあり間違ってもいる。」

 

え?なぜ?と思う方もいるだろう。

 

これは統計などを行っている人なら知っている「平均への回帰」として知られている現象です。

 

では、子供を怒った後は、成績が上がるかを例に見ていきましょう。

 

保護者の方などは経験があるかもしれませんが、子供がテストでひどい点数を取ってきたときには怒るかもしれない。

 

後日、子供は前回よりも良い点を取って帰ってきました(現実ではなかなかないが同じテストを行った場合。わかりやすい例は100マス計算などでしょうか…)。

 

これで私たちはすぐに

「怒ったおかげ子供の成績があがった…」

と考えがちです。

 

それは本当でしょうか?

 

前回のテストでは偶然テストの成績がよくなかったかもしれません。

 

そのため、怒らなくても2回目のテストは成績が必然的に上がる可能性があるわけです。

 

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの著書「ファスト&スロー」にはこんな例がある。ぜひ同僚などとやってみてください。

 

 床に印をつけて(実際には何か目印になるものがあればよい)、標的に背を向けて立ち、結果を見ずにコインを二回続けて投げる。そして標的から距離を測定し、確認の結果を表にして黒板に書きだす。

その後に、一投目の成績がよかった順に並べ替えてみると、一投目の成績がよかった人の大半が二投目は悪くなり、一投目に悪かった人たちの大半が二投目にはよくなっていることがわかるだろう。

 

この実験は私もやりましたが非常に面白いです。また、2回と言わずに試行回数を増やすことでよりわかりやすくなります。

 

このことからダニエル・カーネマン

不出来だったあとはよくなるし、上出来だったあとはますますよくなるのであって、これは誉め言葉や叱責とは関係がないのだ

と述べています。

 

ただ、だからといっても子供たちを賞賛しても意味がないと言っているわけではありません。

 

私は、このことを踏まえて実際に自身が行っていた評価について改めて考えてみてほしいのです。

 

クラスの平均点が全国値よりも高ければ本当にそのクラスの成績は良いですか?

 

と、いう例では、まず前回ご紹介した時間の問題という可能性もあります。参照していない方はぜひこちらを。

 

academykun.hatenadiary.com

 

一方、平均への回帰を考慮すると、今回全国値よりも高かったのは偶然なのではないかと考えることもできます。

 

つまり、もう一度行った場合、そのクラスの平均点は今のものよりも下がる可能性は否定できないということです。

 

もちろん何度も同じテストを繰り返し、それでも平均点を超えているのでもあればおそらく解釈は間違っていないかもしれません。

 

しかし、平均への回帰について知らないとたった1回の結果で誤った判断をしてしまう可能性があるということです。

 

これでは、子供たちに意味のあるフィードバックがて来ているとは言えませんよね?

 

実際には、全国学力調査では1回のもので判断しなければならないのでこのことを考慮するのは難しいですが…

 

ただ、研究授業などに関してはどうでしょうか?

 

確かに、研究授業の時にはよい授業であったかもしれませんが…

 

この後はわかりますよね?(実際には研究授業だから…と子供たちに声をかけるだけでもバイアスになっています…)

 

確かに、平均への回帰の問題でもないくらい…という授業があることは知っています(何を隠そう私の教育実習ですね)

 

また、良い授業とはなんでしょうか?

 

その時に子供たちが理解していることでしょうか?

 

子供たちが将来何かのきっかけでその授業を思い出し、学び続けることでしょうか?

 

何か斬新な方法を使って授業をしていたこと?

 

子供たちがやることを理解して真面目に取り組んではいたこと?

 

おそらく答えは人それぞれ違いますし、心の答えなどないでしょう。

 

ただこのように考えることで、その時の評価だけが全てなのか?と思っていただければと思います。

 

また、平均への回帰についてはなんとなくわかったけど、じゃあどうすれば…

 

その答えは、対象群を設定することです。

 

実際には、同じ子供を同じタイミングで怒った場合、褒めた場合とすることはできません。

 

しかし、授業ならこれまで通り授業を行った群、新しい方法を取り入れた群と比較することができるでしょう。これはまさに研究と同じなのです。

 

私はこれまで、単元の前にアンケートやテストを行い、授業後アンケートやテストでその成績を比較して効果がありましたというような研究を多く見てきまいた。

 

果たしてそれは本当に効果があったと言えるでしょうか?ここまで読んだみなさんならわかると思います。

 

これからの教育をよくするためにも、現場のみなさんもこのような知識は求められると思います。

 

少しでもご参考になれば…では…。

 

参考とオススメ本