Evidenceの学校

根拠(エビデンス)に基づく教育(Evidence-based Education)の発展を目指して!

ひたすら努力することが目標を達成する方法ではない。

あなたは去年どんな目標を立てましたか?

 

実際にその目標を達成できました?

 

できた!という方はおめでとうございます。

 

しかし、これまでの人生で一度も目標を達成できなかったという方はおそらくいないでしょう?

 

では、なぜ目標が達成できないのか。

 

それのことについてコロンビア大学ビジネススクール・モチベーションサイエンスセンター副長のハイディ・グラント・ハルバ―ソン先生が調査しまとめてくれた本「やってのける 意思を使わずに自分を動かす」を参考に見ていきましょう。

 

 

 

目標達成に必要な2つの概念

 

ハルバ―ソン先生は、目標達成には極めて重要な2つの概念が存在すると言っています。

 

1つ目は

目標を達成できるかは、生まれつきの資質のみでは説明できない

というもの。

 

2つ目は

目標を達成する能力は、誰にでも高められる

ということです。

 

アメリカでは信念の目標として「減量」と「禁煙」が多いようです。

 

肥満は糖尿病や循環器疾患のリスクを高めますし、親御さんが肥満であるとお子さんの肥満のリスクが上がることもわかってきています。さらに、小児期の肥満はトラッキング(成人期まで肥満が継続する)することもわかっていますので学齢期に肥満を予防することはものすごく重要です。(もちろん食育や保健を教える立場の先生方は肥満ではないですよね…説得力が落ちてしまいますし…)

 

喫煙に関しても、肺がんのリスクが上昇するだけでなく、近年は副流煙による影響も報告されてますので、自分だけでなく周りの人にも迷惑をかけてしまいます。

 

しかし、実際には禁煙に挑戦した人のうち85%は失敗しているようです。

 

失敗の理由として多くの方は「意志の力」のせいだと考えるでしょう。心理学ではこれを「自制心(セルフコントロール能力)と呼びますが、果たして本当なのでしょうか?

 

この本ではオバマ大統領が禁煙ができないことが取り上げられています。あのオバマ大統領が喫煙していたことを知らなかったので驚きです。現在は実際に禁煙できているかはわかりませんが…

 

では、オバマ大統領は自制心が欠けていたのでしょうか?そんなことはないと多くの方が思うと思います。

 

ではなぜ目標を達成できなかったのか。それは、自制心は筋肉と同じように使うほど披露し、時間とともに回復します。つまり、休息がとても重要ということです。

 

さらに、筋肉と同様ということは…自制心も鍛えることが可能ということです。(鍛えなければ衰えていくということにもなりますが…)

 

実際にハルバ―ソン先生はこう述べています。

運動をする、家計簿をつける、食事の内容を記録する などにより自制心を総合的に強化することが可能であると研究で分かっている。

 

そこで、ハルバ―ソン先生はこの本を通じて、なぜ目標達成に失敗するのか、失敗を回避し目標を達成するためのアプローチを示してくれています。

 

これから、理想の自分になるために目標を達成する方法を一緒に見ていきましょう。

 

Reference

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/338934/Adult_obesity_and_type_2_diabetes_.pdf

 

Childhood Obesity and Cardiovascular Disease: Links and Prevention Strategies - PubMed

Tracking of Childhood Overweight Into Adulthood: A Systematic Review of the Literature - PubMed

 

Association of Adolescent Obesity With Risk of Severe Obesity in Adulthood - PubMed

 

Smoking as a Risk Factor for Lung Cancer in Women and Men: A Systematic Review and Meta-Analysis - PubMed

 

Association of Environmental Tobacco Smoke Exposure With Elevated Home Blood Pressure in Japanese Women: The Ohasama Study - PubMed

 

正しく評価する方法。わが校の算数の平均点が全国値より低い…あなたはこれをどう評価しますか?

昨年のある冬、ある学年主任がこう告げた。

 

「私たちの学年は全国平均よりも算数の平均値が3点低いようでした…対策を考えなければなりませんね。」

 

あなたはこれを聞いてどう思いますか?(じっくりと考えてみてください)

 

できれば最初の意見をコメント欄書いていただけると議論もできますので良いかと。是非ご活用ください。

 

頭のキレる方はそもそも算数の得点は正規分布しているの?そうでなかったら平均点で議論していいの?などさまざま考えられると思います。

 

少し難しいことは置いておいて…

 

教育の評価方法としては「テスト」が多く使われていると思います。

 

標準化されたテスト(全国学力調査、学校で行われる単元テストなど)は、その内容、採点方法についてはすべての受験者で同じです。

 

そのため、標準化されたテストを行うことで、生徒の学習を客観的に評価する方法として知られています。

 

しかし、ある研究者たちはこう思いました。

午後になると疲れて集中力なくなるよな…ん…?つまり、テストを受けた時間によって成績に影響するんじゃないか?

実際に、注意を払う必要がある作業を続けていくとモチベーションが低下することや、注意力が散漫になること、情報処理が低下することがすでに分かっています(みなさんも体感したことがあると思います)。この例には裁判官の囚人の要求の拒否や医療ミスなどさまざまな例があります。(ご興味ある方はお声いただければ例はいくらでも…)
一方、休憩により注意力や生産性の向上が報告されていることから、Sielvertsen先生らは認知疲労そして休憩が、テストの成績に影響するか調査してくれました。

 

まず今回の研究ではデンマークの570,376人の生徒を対象に2009年、2010年と2012年、2013年度に行われたテストデータ約200万件を調査したみたいです。

 

さらにデンマークについて少しだけ。デンマークでは日本でいう全国学力テストがオンラインで行われます。しかし、奇しくも(このおかげでかもしれませんが)コンピュータの数に限りがあることと時間割の影響で同じテストでも子供たちによって受ける時間が違うようです。そのため、テスト時間が異なる群間で対象者の特性に違いは見られなかったそうです(おそらく、偏った集団同士ではないだろう:つまりバイアスはないだろうということです)。

 

余談ですが、デンマークでは日本でいうマイナンバーにより行政デジタル化などが進んでいます。そのため全数調査が可能なので近年興味深い研究を発表してます。(どこかの国は国民の番号の管理すら疑問に思われていますが。しかも、IT担当大臣にハンコの文化を守るとかいう謎の人物がなっておりますが…)

 

また、読解テストは2,4,6,8年生で(デンマークでは6歳から入学して10年生までらしいです)、数学は3,6年生、地理、物理、化学、生物などの科目を7,8年生で行うようです。

 

ちなみに本研究において教師や親にインセンティブなど特別なことはないです(バイアスになるので)。

 

また、学校により休み時間が違うらしいのでおそらくランダムに選んだ10%の学校に電話で確認したところ、多くの学校で休み時間が一致していることを確認し、テスト日にはその通常の休憩スケジュールであるかを確認しています。

 

果たしてテストを受ける時間は結果に影響したのか

 

この研究では、テストが行われた時間が1時間遅くなるについれて点数が少しずつ下がっていきました

 

この影響は、親が低所得であるか低学歴であること、学校を10日日間欠席した場合と同程度の影響になることが分かりました。時間は超重要ですね…

 

一方、20~30分間の休憩(食事や会話、遊び)をした後には成績が低下せずむしろ成績が上がっていました

 

この影響は親が高収入または高学歴であることや学校を19日間多く来た時と同程度の影響がみられました。

 

さらに注目なことが、時間の影響によるパフォーマンスの低下、休憩によるパフォーマンスの向上は成績が良くない生徒たちほど影響が強い可能性が示されたことです。

 

しかし、研究者たちも述べている通り、この研究から学校の始まりをはやくしよう!テストはさいしょにやってしまえ!というわけではありません。

 

学校の始まりを早くすることは教員の方々や保護者にまで負担をかけますし、後日お話しする通り、個人に適したリズムがあります。また、子供たちの睡眠時間を削ってしまってはいけません。

 

テストを早い時間に行うべきか否かについては議論があると思います。しかし、もし自身の学校の成績を全国値や県の平均値と比べる際には時間による違いの影響があるのではない?ほかに成績に影響を与えていた可能性はないか?と考えることが必要だと思います。

 

そうすることで、偶然の差なのか本当に意味のある差なのかをしっかりと理解することが今後の子供たちの教育により効果的につなげれれると思います。

 

つまり、一番最初の質問には

1.平均点が低い要因にはテストを受けた時間の影響があった可能性が一つあります。

2.勤務している学校の学区ではどのような人たちのお子さんなのか(例えば、高級住宅街に住んでいる生徒たち:つまり親の収入が高い、高学歴なことが考えられる、自然災害などの影響で去年授業がなかなかできない時期があった)、など成績に影響を与えた他の要因の可能性もあります。そのため、私が伝えたいことは全国値と比較して平均点が低いからと言ってこの学校は劣っているとすぐに結論付けてはいけないということです。(3点低いというのは根拠はありません。ただ全体として3点低いとなると劣ると考えられるとは思いますが…)

 

実際には他にも、ここはまだ解説してませんが…1回のテストの結果だけでは分からない。(たまたま低かったという可能が否定できないので)などなどたくさんの要因が考えられます。

 

それにしましてもこの研究はなかなか興味深い結果ですね。やはり休み時間は大切。そして成績がよくないほど休み時間による良い影響が強いとは…


コロナの影響で学校が再開した際には時間の余裕がないことが考えられますが、短期的な結果ではなく長期的に考える必要があると思います。

 

ではより効果的な休憩とはなにか、実際にどんな時になにをやればよいかなどこれから発信していきたいと思います。

 

最後に完璧なタイミングについてより詳しく学びたい方にオススメの参考書とReferenceを…では…

 

 参考文献

なぜ英文原著…本屋より安いんだ…(私は原著も読みましたが英語で読める方はぜひ)

 

Reference

Cognitive Fatigue Influences Students' Performance on Standardized Tests - PubMed

 

 

オススメ

 

 

 

どうして私は環境を変えたのか。もっと余暇を過ごす時間が必要です。

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みなさんの労働時間は週何時間ですか?

 

私は研究を行っていますので、去年まで1日12~13時間は研究室に籠っていました。

 

しかし、ある研究を知り私は研究する環境を変えました。

 

その研究で分かったこととは…

 

労働時間が週55時間以上の人は労働時間が週35~40時間の人と比べて脳卒中のリスクが1.3倍であるということです。

 

今回は2015年に発表されたヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの男女603,838人を対象としたメタ分析(論文を統合して再解析した最もエビデンスレベルが高いとされるもの)を行った研究になります。
この論文も医学のトップジャーナルに掲載されていますね。

 

この研究の背景として、長時間労働は循環器疾患に関連することがメタ分析で言われていたのですが、

1.出版バイアス(簡単に言いますと都合の良い結果ばかりを集めたものの可能性があるということ。結果が出ないものなどは論文としないこともありますので)があるのでは?

2.循環器疾患を起こす前に基礎となる疾患がるために労働時間を短くしていた可能性があるのでは?

3.長時間労働の人々は経済的地位が高いのが一般的であり、経済的地位も影響しているのでは?

4.脳卒中についての研究は少なく、長時間労働についても脳卒中と関連するのでは?

 

という上記の疑問を解決しようと研究者たちは調査したみたいですね。

 

この研究では労働時間と冠動脈疾患について調査した3705件、または労働時間と脳卒中との関連について調査した1958件のうち基準に適した合計42件の論文を採用しています。

 

その結果、性別、年齢、社会的地位に関わらず、労働時間が週35~40時間の人(つまり毎日定時に出社し退社する人)と比較して労働時間が週55時間以上の人は冠動脈疾患のリスクが1.13倍となっていました。さらに、脳卒中のリスクも1.33倍となっていました。なんとも恐ろしい…

 

この要因としては、長時間労働によるストレス反応があげられています。また、長時間労働による運動不足(座りっぱなしなど)や大量の飲酒が考えられると研究者たちは述べています。

 

この研究の限界としては、労働時間の調査が自記式であったこと(海外の研究のため、おそらく良い印象を与えるために短めに記載した可能性が考えられます。日本では努力が美化されるので長めに書かれそうですが)、追跡期間中に脱落が多かったこと(バイアスの原因となります)、疾患に関係がある塩分摂取量や血液のデータについては調整できなかったこと、医師が診断したものや自記式によるものなど疾患の判定があいまいなものが含まれたことなど多くあります。

 

しかしながら、長時間労働が健康を害する根拠とはなると思います。

 

授業は立って行っていたり、子供と活動を共にするため、研究を行う私たちより座りがちな生活でないと思います。

 

しかし、教員の皆さんは平均して学校に在籍する時間が1日11時間以上と言われていますので月~金までだとすると(土日も出勤していることは存じておりますが)週55時間を超えてしまいます。

 

この研究結果からみても、自分の自由な時間がないだけでなく、疾患のリスクも上げてしまうというのは由々しき事態です。

 

ですが、国が…文科省が…教育委員会が…と言っていても現状は何一つ変わりません。また、どんなにつらいのかと述べていてもやはりすぐには動いてくれるかの可能性は低いと思います(現に自分が見ていないところで子供たちがあの子が悪いこの子が悪いと言っていても判断できませんよね?)。

 

それならば、客観的事実を集め、これだけのリスクにさらされているのだと提示することが今の現状を変える方法の一つなのではないでしょうか?

 

しかし、今は子供たちがいないから週55時間の労働はないとしても、学校が再開した時にこの状況をどうすればよいのか…

1つは、まずは健康的な生活、つまり運動、食事、睡眠といった規則正しい生活を送ること。(先生ができないことをいっても子供たちに説得力はありませんからね。)

 

いやそんなことはわかっているけどそれをする時間が…

 

では2つ目は、時間を効率的に使い作業を早く終えることです

 

効率的な時間の使い方について今後お話しできればと思っています。

少しでもご参考になれば。では…

 

reference
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)60295-1/fulltext

発表。1年に1回で死亡率が31%下がる方法。テストでいい成績をとることが教育ですか?

2019年の研究で、1年に1回以上あることをしていると死亡率が14%も低く、毎月やっていると31%も死亡率が低いことが分かりました。
これを知ると小学校からやっているあの授業によりこの活動に興味を持たせることが大切になると思います…


そのある行動とはアート活動です。

 

 

2019年のこの研究では50歳以上のイギリス人、6710名を対象として、アート活動の頻度と死亡率の関係を調査しました。
BMJ(The British Medical Journal)という医学で権威のある雑誌にのった興味深い調査です。

 


この研究では、アート活動を劇場、コンサート、オペラ、美術館、アートギャラリー、展示会に行くと定義しています。

 


その結果、アート活動を全くしない群と比較して1年に1回以上行う群では死亡率が有意に低下していました。

 

 

ここで、疑い深い方なら、いやそんなことができるのは裕福な人々や、そもそも教育歴による違いによって影響されているだろう!とお思いになるでしょう。

 


しかし、しかしこの関係は、年齢や性別、社会的な要因などを調整しても(簡単に言いますと年齢や性別、社会的な要因が関係ないと考えること)この関連性は変わっていませんでした。なかなかインパクトがありますね…。

 

 

研究者たちは

アート活動は感情を制御することにより物事に対処する力(コーピング)を強化しることで、ストレスを緩衝し、創造性を構築することで、変化する生活環境に積極的に適応する能力が向上したのではないか。

と述べています。

 

 

もちろんこの研究には限界があります。
文化は国や地域により異なるため、この結果が日本人においても適応できるかはわかりません。

 


また、作曲や絵を描くことやダンスなど主体的な芸術活動は含まれていないのでそれらの効果はわかりません。さらに、結果をゆがめる要因(未知の交絡因子)がある可能性が否定できないため、この関連を決定づけることはできません。

 

 

しかし、主体的な芸術活動も同様の効果が期待できると思いますし、意味がないことはないように思われます。さらなる研究を期待しましょう。

 

 

最後に、「いやでも50歳以上の人々を対象にしているから意味ないだろ…」と思った方もいると思います。しかし、子供のころから芸術に興味を持つことで生涯にわたり芸術活動を行うきっかけになる可能性は否定できないと思います。そのためには学生の時だけでなくその後も学び続けられような働きかけが本来の教育なのではないでしょうか。この記事で、なぜ図工や美術、音楽を行うのか、一つでも根拠があると捉え方が変化すると思います。
参考になりましたらぜひ。最後に私も読んでいる美術の本とReferenceを示しておきます(私も芸術はすこぶる苦手ですが…大人になると新たな発見が出来るものですね)。
では…

 

Reference

The art of life and death: 14 year follow-up analyses of associations between arts engagement and mortality in the English Longitudinal Study of Ag... - PubMed - NCBI

 

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

  • 作者:秋田麻早子
  • 発売日: 2019/05/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

正しい知識を知ることが、子供たちを守ることに繋がります。COVID-19につての最新研究をご紹介。

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COVID-19についての最新研究。今回は、医学のトップジャーナルである The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに掲載された論文にてご紹介いたします。
学校閉鎖などを行っていますが、実際にCOVID-19は子供たちは重症化しやすいのでしょうか。


COVID-19について分かってきたこと

新型コロナウイルス(COVID-19)は、2020年4月4日の時点で208ヶ国で合計1,051,635人がCOVID-19に感染し、75,000人以上亡くなったと言われています。

中国では、新規症例数は劇的に減少しており、イタリア、スペイン、フランス、アメリカであCOVID-19に関連する死者の総数は中国を上回っていると言われています。

2020年3月11日(奇しくも東日本大震災と同じ日に)、WHOはCOVID-19がパンデミックであると発表しました。

これにより、世界各地で、隔離や検疫、国境の封鎖など前例のない対策を行っています。

現在もCOVID-19について多くの研究が報告されていますが、女性や子供ではCOVID-19の影響が過小評価されていることが示されているみたいですね。これは、女性や子供がCOVID-19に感染する可能性が低いためなのか、症候性になる可能性が低いためなのかまだ分かっていないのが現状のようです。

そこで、研究者たちはアイスランド人を対象に、感染症のリスクが高い人を対象として検査と、全人口を対象とした検査を行い、ウイルスを抑制するために実施した対策が成功したものか調査したみたいですね。

 

この研究の対象者

この研究では、咳、発熱、体の痛みや息切れの症状がある人や、保健当局によって高リスクであると分類されたく国や地域からアイスランドに戻ってきた人、感染者と接触している人が感染リスクの高い人と定義されています(9,199名)。

 

無症状である者、この時期にアイスランドで流行している一般的な風邪の症状が軽度であるアイスランドのすべての人々を対象として、調査の登録をお願いし、スクリーニングも行っております(人口スクリーニング)。サンプルの回収は首都レイキャビク(是非この機会に調べてみてはいかがでしょうか?オーロラも見れるとか…)で行われたため、参加者の大多数は首都圏に在住の人であったようです(人数は10,797名)。

また、この研究の面白いところでもありますが、さきほどのサンプリング方法を評価するために、20~70歳のアイスランド人をランダムに選択し、研究の参加をお願いしており、2797名から同意を得ています(後に、この必要性が出てきます)。

 

最新研究で分かってきたこと

ではこの調査の結果何が分かってきたかといいますと

アイスランドでは人口スクリーニングで陽性と判定された人の割合は20日間にわたって安定していました(0.8%)。これは人口スクリーニングの対象者でもランダムサンプリングでの対象者でも大きな違いがみられなかったみたいです。

 

これは、アイルランドの医療当局による封じ込めの取り組みと、機敏な対応が要因である可能性があると言っておりまして、自己隔離、検疫、その他の社会的隔離措置も、感染率の増加を防ぐのに役立つ可能性があると研究者たちは述べています。

 

ただ、人口スクリーニングを行うために集めた人々では、呼吸器症状がある人が半数近くたようです。これはこの研究方法の弱点でもありまして、感染しているかしていないか調査してくれると言われて集まる人は感染を心配している可能性が高い人ということが考えられるからです。そのため、この研究では対象者をランダムに選定した群を作り、比較したんですね。ランダムに選定していますので、人口スクリーニングの集団にバイアスがあるものか確認したものと考えられます。

 

しかし、興味深いことに、陽性を示した参加者の43%は症状がないと報告していたみたいです。やはり、症状がなくても感染している可能性があるので自分だけでなく他の人々を守るためにも出歩くのは控えたほうが良いのでは…

 

この研究においても、幼児(10歳未満)、女性は、青年または成人、男性よりも発生率が低いと報告されています。

 

この要因としては、ウイルスへの曝露が少ないためか、生物学的に耐性があるものかは未だにわかりません。しかし、他の件きゅにも、子供と女性は成人や男性よりも重症の可能性が引くことが報告されていますので結果が一致しているようです。

 

最後に研究者たちはこのように述べています。

このウイルスは検査と隔離、接触者の追跡、隔離を継続しない限り、封じ込めるのを失敗する可能性が高いほど広がっている。

 

今現在も、患者だけでなく医療関係者など多くの人たちがこのウイルスと闘っています。確かに、国の対応のまずさなど多くの問題がありますが、私たちが本当に戦うべき相手はコロナウイルスです。

 

彼を知り己を知れば百戦殆からず

孔子も言うように、まずは相手(コロナウイルス)について正しく知ることが大切だと思います。そして、自分に今できることを続けていく。それが、自分だけでなく大切な人を守ることにつながると思います。

 

最後にこれからもエビデンスを届けいてまいりますので、よろしければ読者登録もお願い致します。(論文にはここでは紹介しきれていない結果も含まれていますし、私の解釈が間違っていることやこの結果がいづれ覆されることはもちろんありますので、不確実性を考慮すること、そして可能であればご自身で原著論文を確認することをオススメ致します。)また、Twitterにて最新記事のご連絡を致しますのでフォローの方もぜひ

 

皆様もお体にくれぐれも気を付けて。では…

Reference

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

 

 

学校閉鎖。成果は約束されていない。

では引き続きCOVID-19の感染率に関して学校閉鎖の有効性や費用対効果はどうなの?という問題に関してですが、その背景を知っていただいたほうが理解しやすいと思いますので以前の記事もぜひご参照ください。

 

academykun.hatenadiary.com

 

 

実際にこの研究では616件の研究から質の高い16件の研究を取り上げまとめています。まだまだCOVID-19についての調査報告は少ないのでSARSの際の学校閉鎖の研究なども含まれています。また、査読されていないものも含まれていました。そのためこの研究が全てを決定づけるというわけではありません。

 

この研究の結果、やはりデータが不足していることもあるので学校閉鎖の有効性に関するデータや費用対効果はわからないと研究者たちは言っております。

 

中国ではCOVID-19の制御に学校閉鎖が関与した可能性が高いと結論付けている論文がありますが、中国や香港では一斉に学校閉鎖を行ったため、学校閉鎖を行っていない比較対象がないために結論を裏付けるデータがないことも示されています。

 

しかし、これらの論文を調査し研究者たちは

入手できるデータはまだ少ないが、学校閉鎖は感染症の減少に対しての影響は小さく、学校閉鎖に伴う経済的なコストと潜在的な害は非常に大きい

と述べています。

 

COVID-19はインフルエンザとは異なり、子供も成人と同様の割合で感染しているか可能性がありますが、軽度や無症状なために咳やくしゃみを通してウイルスを広める可能性が低いことも考えられます。しかし、データが不足しているため結論付けることはできません。

 

また、現段階では、COVID-19に対する国をあげての学校閉鎖の効果を支持する証拠は弱く、学校閉鎖が経済的、社会的に重大な影響をもたらす可能性があることが示唆されています。

 

研究者たちも述べている通り、
学校閉鎖は感染症の蔓延を減少させる常識的な方法であると考えられます(インフルエンザのように)。しかし、長期的な学校閉鎖は非常にコストがかかるため、学校閉鎖をするにしても実際に効果的かはわからないという不確実性を認知している必要があります。

 

実際に、学校閉鎖を行うことで、医療従事者も育児に専念する必要に迫られ、医療システムの維持にも影響することが考えられます。

さらに、教育は国の将来的な労働者の健康と富の予測因子の1つであるため、学校閉鎖による教育への影響が若者の健康、将来の国の生産性に与える影響は定量化できません。教育に国の将来がかかっていることがよくわかります。教育に携わることはつまり、長い目で見て日本の発展に繋がる重要な職業ということが改めて分かります…

 

これらのことから、

1.現時点では学校閉鎖をしてもCOVID-19の感染拡大抑制にはあまり影響しない可能性がある。

2.また、現時点ではデータが少なく詳細が分からないため、COVID-19においてもインフルエンザのように成人よりも子供への影響が高い可能性を考慮し、学校閉鎖を行った次第である。(先生方が学校閉鎖を決めたわけではないですが、全員が国によるものと理解しているわけではないためですね。)

といったところでしょうか。

 

それにしましても、さらに多くの研究が行われ、より効果的な方法が見つかり、一日でも早い終息を望むばかりですね…

 

今回のように、なぜ休校が行われたのか、それにはどのようなメリット・デメリットがあるのか知ることは重要だと思います。
また、この研究から出歩いてもよいということにはなりません。引き続き3密を避けることが重要だと思います。
今できることから始めましょう。夜明けが一日でも早く来るように…では…

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すべての学校関係者が知っておくべき事実。あなたは新型コロナウイルスに対する学校閉鎖の効果を答えられますか?

学校閉鎖が新型コロナウイス対策として有用なのでしょうか?


今回は2020年4月6日に医学のトップジャーナルであるThe Lancetに「COVID-19の感染率に関して学校閉鎖の有効性や費用対効果はどうなの?」といこうとまとめた論文(Systematic review:簡単に言いますと質の高い論文をまとめたものでエビデンスレベルが高いもの)が掲載されました。

 

COVID-19の影響で現在107の国が学校閉鎖を行っており、8億6200万人のこどもたちが影響を受けているといわれています。なかなか深刻ですね…

 

感染症というとなじみ深いのはインフルエンザですが、インフルエンザに関しては学校閉鎖が有効というSystematic revieの論文が多く発表されています。しかし、以前流行したSARSやMERS、今回のCOVID-19において学校閉鎖が効果的かはまだはっきりとしていないんですね。

 

また、インフルエンザにおいて学校閉鎖が効果的であることは言われていますが、学校が再開すると再び感染が急増したという証拠もあり、学校の再開だけでなく、閉鎖の適切なタイミングにつていも正直分からないところです。

 

また、ただ学校閉鎖をすればよいというものでもなく、学校閉鎖に加えて親が自宅で仕事をすることが大切になります。仕事による接触を減らせるかなのですが。

 

しかし、これには親の仕事の生産性の低下、医療従事者なども仕事ではなく育児をしなくてはならない、脆弱な祖父母への影響、そしてもちろん教育への影響、給食が重要な栄養源である子供たちへの栄養問題、社会的孤立など多くの問題を引き起こすことが報告されています。

 

しかし、都市全体ではなく部分的な学校閉鎖生徒間の距離を広げること、学校の開始や休み時間をずらすなどの方法は社会的な混乱を減らしかつ集団発生において効果的であることも報告されています。

 

ではコロナウイルスでは?  f:id:academykun:20200423091716j:plain

 

これまでインフルエンザに対しての学校閉鎖の効果をお話しし来ましたが、実際にコロナウイルスではどうなのでしょうか?

 

現在、わが国においても学校閉鎖が行われていますが、伝播が成人よりも子供が多く寄与するなどCOVID-19もインフルエンザと同様なものと仮定して行われています。

 

しかし、現状では子供たちの感染は予想されたものより低くという報告や成人と同等であるというものなどエビデンスが確立されていません。(これは本当に子供たちでは感染リスクが低いのか、無症状や軽度な感染なのか、中国の調査が多いため、一人っ子政策などの集団の影響なのかわからないためです。)

実際に、中国では学校を通じてCOVID-19が伝播するとした証拠はほとんどありませんが、流行していた時には中国は旧正月であったためにもともと学校がやすみであったためという可能性が大いにあります。

 

一方、台湾では、COVID-19の蔓延を効果的に抑えていると世界的にも称賛されていますが、旧正月を2週間延期しただけで、学級閉鎖や学校閉鎖には基準をもうけ、現在授業を再開しています。

 


このような現状から、学校閉鎖はCOVID-19に実際に効果があるの?ということをRussell M Viner博士らは調査してくれたのですね。

 

前置きが長くなってしまったので結論はまた次回に。
感染症が流行すると学級閉鎖や学校閉鎖をすることがなんとなく当たり前と感じていますがそれはなぜか…学校関係者であればご存じですよね?と言われた時に答えられるでしょうか?2020年の研究では…というように根拠をもって回答できることも必要だと思います。

では、続きはのちほど…

Reference
https://www.thelancet.com/journals/lanchi/article/PIIS2352-4642(20)30095-X/fulltext